前田宮大教授が研究-湧水から採取した善玉菌、鳥フルに作用
県内の湧水(ゆうすい)地から採取した善玉菌(シュードモナス菌)に、鳥インフルエンザウイルスの抑制作用があることが、前田昌調(まさちか)宮崎大農学部生物環境科学科教授を中心とした研究で分かった。疾病予防はもちろん、養鶏への成長促進効果も確認、自然への悪影響も少ないことから注目を浴びそうだ。二十七日に同大であった第十四回技術・研究交流会で発表した。
雲海酒造、県畜産試験場、県総合農業試験場、県食品開発センターとの共同プロジェクト。自然界では細菌などの微生物が各種ウイルスを分解、増加を抑制することが以前から分かっており、前田教授らのグループは獣医学科の協力で、どの細菌がどのウイルスに効果があるかを調べた。
宮崎市内の農地近くのわき水からシュードモナス菌という善玉菌を分離、培養し、鳥インフルエンザウイルスを抑制するかどうかを検査したところ、一時間以内に不活化(感染力を奪うこと)したという。魚類感染ウイルスへの実験結果も同様だった。
鳥インフルエンザは今年新年早々、日向市などで発生し、養鶏農家に大きな被害をもたらした。前田教授によると、発症の一因に毎日の抗生物質(成長促進剤)の使用がある。先進国では日本と米国だけが禁止していないが、畜産現場からは薬剤を使用しない養鶏への要望が高まっているという。
「抗生物質は肝心の細菌を滅ぼし、ウイルスには効果がない。敵がいなくなった分、ウイルスはより増加し、交配して新型が出現する」と同教授。
研究はシュードモナス菌を大量培養し、抗生物質を除去した配合飼料に混ぜ、約五カ月間、鶏と豚に与えることも実験した。その結果、同菌の代わりに焼酎かすを混ぜた物、抗生物質を含んだ通常の物と比べ、少ない飼料で最も高い成長率が立証された。
また、環境への影響を調べるため同菌をトマトなど野菜類に投与したところ、成長促進のデータも得られた。
前田教授は「鳥インフルエンザウイルス研究の専門家の大槻公一鳥取大農学部名誉教授からも、『有意義で実用化の望める研究成果』との評価を頂いた。肉質の向上も期待でき、養鶏のブランド化も促進できる」と話している。