宮崎大研究グループが菌の鳥インフル抑制作用を発見
(2007年10月23日 読売新聞)
宮崎大農学部の前田昌調教授が、泥や河川、海水などにいる細菌「シュードモナス菌」に、弱毒性鳥インフルエンザウイルスの抑制作用があることを発見した。前田教授は「鳥インフルエンザの予防に役立つ成果を目指したい」と話している。鶏にシュードモナス菌を含む飼料を与えると、成長促進剤より成長が早くなることもわかった。
前田教授の研究グループは2001年に、県内約100か所のわき水からシュードモナス菌の採取を始めた。今年4月、菌を培養した上澄み液を犬の腎臓の細胞と100万個のH3N8型の弱毒性鳥インフルエンザウイルスに混ぜて2日間観察したところ、腎臓細胞に変化は見られず、ウイルスの数は100個にまで減少した。菌を入れなかったケースでは、ウイルスの数は変わらず、腎臓細胞に穴が開いていた。前田教授は「菌がウイルス本体を覆うタンパク質の『外皮』を分解して感染力をなくした結果」と分析。「菌が、弱毒性鳥インフルエンザウイルス本体に有効に働いた」とした。今後、感染症を伴う実験にも対応できる設備が整った研究施設で、菌が強毒性鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏にも有効かどうかの実験を検討する。
一方、05年11月と06年5月には、県畜産試験場川南支場で約5か月間ずつ、鶏のオスとメス25羽ずつを対象に▽シュードモナス菌入り▽成長促進剤を含む抗生物質入り▽4週目まで抗生物質入り▽シュードモナス菌、抗生物質とも入れず――の4種類の飼料を与える実験を実施。シュードモナス菌を入れた鶏の成長が最も良く、体重は抗生物質入りよりもオスで約2%、メスで約3%増えた。
養鶏業者は、成長促進剤を含む抗生物質を使用しているが、前田教授によると、抗生物質がウイルスを抑制する細菌を減少させるため、使い過ぎると、鳥インフルエンザなどを引き起こしやすいと指摘している。前田教授は「薬剤を使わずにシュードモナス菌を鶏の飼料や水に加えたり、鶏舎の床にまくもみ殻などに含ませたりする方法を示せた」と話している。